
- 人気バーチャルシンガー「花譜」の歌声を簡単かつリアルに再現できる
- MacOSには非対応
- スタンドアローン版のみで、プラグイン版はなし
- CPU・メモリ負荷が高い
ブランド | THINKR(シンカー) |
カテゴリ | ボーカル&クワイア音源 |
販売期間 | 2021年7月7日 ~ 現在 |
ユーザー | syudou いよわ カンザキイオリ ツミキ てにをは ナユタン星人 煮ル果実 羽生まゐご ユリイ・カノン / 月詠み |
「音楽的同位体 可不」は、YouTubeのチャンネル登録者数が75万人(2022/12/26時点)、総再生数が約2億3000万回を誇る大人気バーチャルシンガー「花譜」の歌声をベースに制作された、Cevio AI専用のソングライブラリ(歌声音源)です。
本ソフトはまるで「花譜」本人が歌っているかのような歌声を製作可能で、有名ボカロPとのタイアップ企画も相まって非常に話題となりました。
販売形式としては、ライブラリ単体(パッケージ版/DL版)のほか、エディターソフト「CeVIO AI」をセットにしたスターターパッケージが存在します。初めてCeVIO AI対応ライブラリを買う方は、スターターパックを購入する必要があります。
メリット
人気バーチャルシンガー「花譜」の歌声を簡単かつリアルに再現できる
本ライブラリは、AI技術を搭載した音声合成ソフトウェア「CeVIO AI」上で動作します。
この「Cevio AI」には、ディープニューラルネットワーク(DNN)や畳み込みニューラルネットワーク(CNN)という最新のAI技術が搭載されており、ベースとなった人間の声質・癖・歌い方を簡単かつ忠実に再現することが可能です。
VOCALOIDのような従来の音声合成ソフトウェアでは、歌詞を上手く発音させたり、狙った音程や歌唱表現を行わせるには、エディターの各種パラメータを手動で調整する「調声」と呼ばれる作業が必須でした。
CeVIO AIは、AIがその「調声」をある程度まで自動で行ってくれるため、特に手を加えなくてもかなり自然な歌声が得られます。
つまり「音楽的同位体 可不」と「CeVIO AI」を使えば、誰でも簡単に人気バーチャルシンガー「花譜」が持つ唯一無二の声質と歌唱表現を自分の楽曲に取り入れることができるというわけです。
デメリット
MacOSには非対応
可不を含め、CeVIO AIのボイスは全てWindows OSでしか使えません1正確に言うと、CeVIO AIというAI音声合成ソフト自体がWindows OSにしか対応していない。。したがってMacOSをお使いの方は、Boot CampもしくはParallels Desktopをはじめとした仮想OSソフトを併用する必要があります。
ただしこれはIntel版Macに限った話であり、M1チップを搭載した現行のMacでは多くの問題が存在します。まず、M1マックはBoot Campが不可能である上に、Parallels Desktopで起動できるのはARM版Windowsとなります。
ARM版は通常のWindowsとは仕様が異なるため、Parallels Desktopを通したARM版Windows上でCeVIO AIを起動すると、ファイルの保存ができない等のエラーが報告されています。
更に、開発元であるCeVIOプロジェクトが”仮想OS(ARM版Windows)上での起動で生じた問題はサポート外である”と公言しています。したがって、M1MacでCeVIO AIを使うのは現実的ではありません。
【お知らせ】M1 Macに仮想化ソフトを介して構築されたARM版Windows 10環境において、『CeVIO AI』のプロジェクト保存やWAV書き出しの問題をご報告頂いておりますが、ARM CPUは現在サポート外であり、また仮想化ソフト上の問題については仮想化ソフトの提供元にご相談願います。
— CeVIOプロジェクト スタッフ公式 (@CeVIO_st) March 19, 2021
ちなみに「CeVIO AI」の姉妹ソフトである「VoiSona(旧称:CeVIO Pro)」では、MacOSに対応したほか、VSTi/AUプラグインとしてDAW内で起動できるようになりましたが、従来のCeVIO AI専用バンクとの互換性がないため注意が必要です。
スタンドアローン版のみで、プラグイン版はなし
前項でも触れましたが、CeVIO AIはスタンドアローン型のソフトでプラグイン起動には対応していません。
したがって、DAWで制作した楽曲にCeVIO AIのソングトラックを読み込みたい場合は、一旦CeVIO AI側でソングトラックをwav形式で書き出す必要があります。
ただ実際はもう少し手間が増えて、下記のような手順を踏むことが多いのではないかと思います。
使用者が多いVOCALOID専用のエディターソフト「Piapro Studio」がVSTi/AUプラグインとしてDAW上で起動できるのと比べると、少し手間が掛かるなという印象です。
ただ、Piapro StudioにはAI技術が搭載されておらず、CeVIO AIの方がより自然な歌声に近づけるのが楽だというメリットを考慮すると、総合評価としてはほぼイーブンだと感じます。
ちなみに、ヤマハがリリースした最新版の「VOCALOID6 (Editor)」ではAI機能が実装され、CeVIO AIのようにベタ打ちでもある程度自然な歌唱が実現可能となったものの、初音ミクや鏡音リン・レンといったV4XライブラリではAI機能が使えないので注意が必要です。
CPU・メモリ負荷が高い
先述した通り、CeVIO AIは実在する人間の声質や歌い方を高度な演算処理によって再現しているため、音声データを繋ぎ合わせて音声合成を行うVOCALOIDと比べると、CPU・メモリ負荷が高くなっています。
ただ、とんでもなく高スペックなPCが必要というわけではなく、一般的にDTMに必要とされているスペックを満たすPCであれば問題なく動作しますので、そこまで気にする必要はないでしょう。

参考までに、VOCALOID4を採用した初音ミクV4Xの最小動作環境が「CPU:Intel Core 2 Duo 2GHz 以上、RAMメモリ:2GB 以上 (4GB 以上を推奨)」なのに対し、CeVIO AIを採用した「音楽的同位体 可不」は「CPU:Intel Core i3 以上/AMD Ryzen 3以上、RAMメモリ:4GB」となっています。
